『合成ゲノムで生きた細菌 米チーム作製成功、「人工生命」近づく技術』
【ワシントン=共同】人工的に合成した細菌のゲノム(全遺伝情報)を別の細菌の細胞に組み込み、生きた細菌を作ることに成功したと、米国のクレイグ・ベンター博士が率いる研究チームが20日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
ウイルスを人工的に作った例はあるが、ゲノムがより複雑な細菌での成功は世界初という。細胞膜や細胞内の物質は人工合成していないため完全な「人工生命」ではないが、その実現に近づく画期的技術といえる。チームは今後、バイオ燃料を製造したり、有害物質を分解したりする有用な微生物作製を試みたいとしている。
ただ、人工的な生物を環境中で利用した場合、ほかの生物や自然環境にどのような影響を与えるのか未解明な点が多い。生物兵器開発に利用される恐れも指摘され、規制を求める声も強まりそうだ。
作製したのは、遺伝情報として約100万個の塩基対を持つ「マイコプラズマ・ミコイデス」という細菌とほぼ同じゲノムを持つ細胞。
チームは、ミコイデスのゲノムの設計図を基に1000塩基対程度の短い情報を持ったDNAの断片を化学的に合成。さらに、DNA断片を大腸菌や酵母菌に組み込んでつなぎ合わせ、完全なゲノムを合成した。次に「マイコプラズマ・カプリコルム」という別の細菌を特殊な液体に入れて本来のゲノムを失わせ、そこに合成ゲノムを移植。カプリコルムの細胞内で合成ゲノムが働き始め、細胞の自己複製が始まった。』