Part3 ペルー
カワサさんはまだ続けます。マラリアにはセドロという木の樹皮を煎じたものを三日飲む。そして、それで体をふく。癌にはコパイバオイルを飲む。皮膚病にはグラナディーアの葉を煎じて飲む。特に水虫などはアチーラの根を煎じて、それで洗う。産後はサングレデクラードの樹液を5滴のみ、それで膣を洗浄すると、母体の回復がはやい、など、など。すべてアマゾンの植物なので、コパイバオイル以外は初めてきくものばかりなので、ノートにメモをとるのが大変です。
コパイバオイルはアメリカにも輸出され、癌の代替療法にもときどき使われています。ただ日本では、「波動が高く神聖な~」というような表現になり、結局は怪しいまゆつばものに分類されてしまい、僕もまだ使ったことがありません。しかし、アマゾンのシャーマンが使うのですから、感覚が鈍ってしまった僕たちの理解を超えた、何らかの治癒力があるのかもしれません。
これらの知識は、伝承とアヤワスカから得られたとカワサさんはおっしゃる。ここで、アヤワスカについて簡単に説明しておきましょう。
アヤワスカはアマゾン流域に自生するつる性の植物で、他の樹木に巻きつきながら成長し、学名がバニステリオプシス・カーピです。またこの植物の樹皮と、幻覚剤の一種であるジメチルトリブタミン(DMT)を含む二、三種類の植物の葉を、数日間煎じてつくる一種の向精神性の飲料をアヤワスカとよぶこともあります。カーピにはモノアミン酸化酵素阻害薬の一種が含まれていますので、DMTが急速に分解されず、アヤワスカを飲むことによって、数時間さまざま幻覚を得ることができるのです。
先住民はアヤワスカを「植物の教師」とも呼んでいます。それは、変性意識の中に現れる多様な幻覚を通じて、通常では得られない、たとえばどの植物がどの病気に効果があるかなどといった知識を得ることができるからです。多くの作家や画家が体験しています。古くは「アウトサイダー」、最近では「アトランティスの暗号」で有名なコリン・ウイルソンや、ベストセラー「神々の指紋」を書いたグラハム・ハンコックなどもアヤワスカを飲んでいます。後者にあっては、アヤワスカこそが、行き詰った現代文明の突破口を開くものだ、みなさん飲みましょうという、脳天気なことまで極論しています。作家のみならず、おそらく多くの欧米の画家やミュージシャンは、試したことだろうと推測されます。それをあてにした、アヤワスカツアーまであるくらいです。
アヤワスカは非常に飲みづらいらしく、また飲んだあと、ひどい嘔吐や下痢をきたすことが一般的だということで、僕はまだ飲んだことはありませんし、これからも試したいとも思いません。とにかく、向精神薬に相当する物質が入っているわけですから、危険です。日本では当然、違法です。よほど、アイデアに詰まって、にっちもさっちもいかなくなった芸術家以外は試さないほうがいいでしょう。しかし、アマゾンのシャーマンにとっては、アヤワスカは必需のようです。アヤワスカを飲んで得た知識という表現が自然に聞こえるのです。先住民の文化に根強く行きわたっているようです。
そこで、肝心なことですが、はたしてアマゾン先住民の一般的な健康状態はどうなのかということですが、決してよくありません。もとより正確な平均寿命などはわかるよしもありませんが、長生きでもせいぜい60歳ほどだということです。猿、アルマジロ、オームなどを食べるために、細菌やウイルス感染にかかることが多いらしいのです。今でも、吹き矢の先にクラーレを塗り、それで樹上の猿を狩猟することは頻繁に行われています。また、カワサさんが最初に述べた、エイや、サソリに刺されて死亡することも多いのでしょう。ただ、彼の引き締まった体を見ていると、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームといった病気はすくなそうです。
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