予定はずれていた

はるばるサンフランシスコまでやってきたのに。
しかし、リマまでのフライトはインターネットで買った安売りチケットなので、出発日の変更はできません。６万円弱なので、捨てて、新しく買い直してもいいのですが、問題は、ペルーでの日程がすでにきっちりと決まっており、それを一日でもずらすと、かの地で待ってくれている人に大変に迷惑がかかるということなのです。すでに、リマ→イキトス→タラポト→リマという飛行機のチケットは、かの地で待っておられる東江（アガリエ、と読みます）さんが買ってくださっています。また、イキトスのアマゾン総合研究所の所長との面会、州の副知事との面会、イキトス、タラポト、リマのホテルの予約、すべて２４日に僕がリマに着くという予定で、決まっています。それを一日でもずらすということは、とてもできません。結局、僕は多和田教授の研究発表をこの目で見ないままに、リマに発つことになったのです。
なぜこういうミスがおこったのか。詳しく説明しても、いまさら無駄なことなのですが、簡単にいうと、ポスター発表される多和田教授には、当然、アメリカ化学学会は発表日時を知らせてきているが、単なる一般会員である僕には知らせてきていなかったということにつきます。あとは、教授とのコミュニケーションのやり取り中に生じた複雑な伝達ミスです。
普通、大学の研究室で実際に実験を行うのは、大学院の学生、あるいは助手です。今回の教授の研究も、ネパールから琉球大学農学部大学院に留学しているアツール君が担当です。したがって、彼もこの研究発表には来ます。しかし、まさに経費節減のために、彼は２４日の前日である２３日に沖縄からサンフランシスコにやってきます。月桃の素晴らしい効果を世に知らしめるためのお手伝いは、このアツール君に託すしかありません。 と、いうようなわけで、明日２１日（日曜日）から、毎日、ポスター発表だと勘違いしていた僕は、明日からアツール君に会うまで、これといった明確なあてがなくなってしまったのです。サンフランシスコ市内の観光、あるいはちょっと足をのばして郊外のワイナリーの見学か、いっそのことラスベガスまで飛んでギャンブルでも。しかし、サンフランシスコ市内の観光はゴールデンゲイトブリッジとチャイナタウンで十分。酒は飲めないのでもとよりワイナリーには何の興味もありません。ルーレットで勝つほどの才能があれば、とっくの昔にさすらいのギャンブラーになっていたでしょう。なんとなく手持ちぶさたというか、無聊な日々になりそうな予感です。しかし、その予感はみごとにはずれたのです。
と、書くと、サンフランシスコ犯罪コネクションと接触か、あるいはグラマーな金髪美人との出会いかと、ハリウッドの三流映画の筋書きになってしまいそうですが、そうではありません。単純すぎて、まじめすぎて、読者にとってははなはだ面白くないことなのですが、学会の研究発表が実に多彩で興味深く、まさに朝から晩まで、あるときは口頭発表を聞き、あるときはポスター発表を見と、広い会場を駆け巡り、いくら時間があっても足りないくらいだったのです。したがって、初日、サンフランシスコに着いてすぐにゴールデンゲイトブリッジで証拠写真を撮ったのは正解だったのです。２１日、２２日、２３日と、まる三日間、ホテルと会場を行き来するだけで終わってしまいました。